環境科学部長 長江 真樹
水俣病などの公害をはじめとして重大な環境問題に直面してきた経験から、産業・経済発展だけを優先させて生きていくことはできないと人々は気づかされました。しかしながら現在であっても、地球温暖化を含む気候変動、化学物質汚染、生物多様性の喪失など、様々な環境問題が発生・進行するとともに、その深刻度は増しています。いまを生きる私たちだけでなく、次の世代や、さらには人間以外の動植物を含めて、すべての生き物が持続的かつ発展しながら生きていくためには、地球の健康すなわちプラネタリーヘルスを取り戻すことが最優先事項です。
長崎大学環境科学部では、環境問題解決のための現場対応力を備えた人材育成を理念として、環境科学に関する教育・研究を推進しています。環境科学は、一つの専門領域だけでは解決できない複雑な問題を扱うため、複数の専門領域の知見を統合して取り組む必要がある学際的分野と位置付けられます。例えば、温室効果ガスの発生抑制を考える際、解決策の一つとして科学的には太陽光パネルの設置が案として挙げられるでしょう。しかし、太陽光パネルを森林に設置すれば、森林が持っていたはずの防災力や生き物の生活環境も損なわれますし、さらにはそれを人々がどのように許容するのかも考慮に入れる必要があります。
本学部では、政策学、経済学、法学、社会学などの社会科学(文系)分野と、生物学、化学、物理学、地学、気象学などの自然科学(理系)分野の双方をバランス良く学ぶことができるカリキュラムを設置し、文理双方からの視野を持って環境問題に対応できる人材の育成を目指しています。また、現場対応力を身に付けるために、フィールドに関連した講義や演習を数多く取り入れている点も大きな特徴の一つです。これらを通じて、環境に関する政策の意思決定を助ける公務員、環境を保護する水処理場の設計、野生生物調査・環境調査を行う企業の会社員として活躍する卒業生を多数輩出しています。
皆さんの高校でのコース選択や進学時の大学選択の際には、まず文系と理系のどちらにするかの選択をせまられます。それぞれの科目が得意か、興味があるか、また将来の職業をどうするかを考えて選択することになるでしょう。みなさんのなかには、どうして文系と理系に完全に分かれる必要があるのか不思議に思う人もいるでしょう。本学部が取り組む環境科学の学問分野では、その両方の資質・素養を活かし、さらに深化・発展させることが可能です。「理系科目がやや苦手なため、高校では文系コースに所属しているが、本当は自然科学(理系)の学問分野に興味があり、その分野の学部に進学したい」や、その逆のパターンなどは良くあるケースです。環境科学部は、そんな皆さんの学問的興味や志向にもフィットする学部です。
本学部の入試では、皆さんの得意科目を活かした文系受験(選抜方法A)および理系受験(選抜方法B)どちらかの受験方法を選ぶことができます。1年次には全員が環境科学の基礎となる文系/理系両分野の科目を受講します。2年進級時に文理どちらかのコースを選択しますが、受験した選抜方法とは関係なく自由に選択できるので、柔軟な進路の再検討・選択が可能であり、職業選択の幅が大きく広がります。
環境科学は社会科学と自然科学の多くの学問分野が融合した文理融合・学際的分野です。文系あるいは理系という枠に捉われず、それらを幅広く学び、広い視野・思考力を身につけ、将来、様々な環境問題の理解・解決に貢献しませんか。私たちは、そのような皆さんの入学を楽しみに待っています。共に学び、研究しましょう!
長崎県には、五島列島や対馬などの離島や、雲仙普賢岳を含む雲仙・天草国立公園など特徴的な自然環境が広がっています。
長崎大学環境科学部では、これらの豊かなフィールドを活用し大気科学、水文学、保全生態学といった自然科学に加え、都市計画学や社会学などの社会科学も幅広く学ぶことができます。
環境科学部は、人間と環境の調和的共生という人類史的な課題に対し、自然と人間との調和を踏まえた自然環境の保全と持続可能な人間社会の創造・実現に寄与することを理念としています。この理念を実現するために以下を教育目標としています。
環境科学部は1997年の設立以来、学部運営の基礎固めを行いました。その後も順次、新しい教員を採用し、現在では環境分野のエキスパートがそろっています。 そのため、様々な視点から環境問題を学ぶことができる体制が整っています。
学部生は各教員の研究室に所属し、卒業研究を行うことになります。各研究室から、環境保全に結びつく研究成果が数多く得られています。
以上はインパクトのある研究成果の一例です。また、インパクトのある成果になる一歩手前の卵がたくさんあります。この卵がかえるには皆さんの協力が必要です。ぜひ、一緒にやってみませんか。